「タコについて」
日本の食生活に深く根付いているタコ。多様な種が知られていますが、日本で一般的に「タコ」と言えば、食用などで馴染み深いマダコを指す場合が多いです。
実は日本人とタコの関係は古く、池上・曽根遺跡などの大阪府下の弥生時代の遺跡からは、蛸壺形の土器が複数出土している程です。
夏を迎えるに当たり、鱧と同様夏を旬とするタコ(6月~7月/9月~10月)について今回は色々と書かせて頂きたいと思います。
1、タコの概要について
「タコとは?」
タコは八腕形上目のタコ目に分類される軟体動物です。頭のように見える丸い部分はタコの胴体にあたる部分で、中には内臓などの器官が収まっています。実際の頭は目や口器のある部分であるため、頭から直接足が生えていることになり、これらの仲間を頭足類といいます。また、映画やドラマの会話で「このタコ!」といった風に罵倒の意味合いで使われることが多いですが、実は無脊椎動物の中では最も知能が高い部類に入ります。例えば蓋をした透明な瓶の中にいるカニを視覚のみで認識して瓶の蓋をひねって開けたりするというのはとてもいい例です。更にタコは日本では人気の食材ですが、食用としている国は意外と少なく、メキシコ、イタリア、ギリシャ、スペインなど一部の地域で食されているのみです。また、タコを食用としない西欧(イギリスやフランス等)などの地域では「デビルフィッシュ(悪魔の魚)」とか、「シーデビル(海の悪魔)」と呼ばれ、漁師ですら食用にしないそうです。余談ですが、某有名ホテルのシェフがフランスに修行に行った時向こうのシェフに「何故、日本人はタコなんて気持ちの悪い生き物を食べられるのに蛙が食べられないんだ?」と真面目に質問され、答えに困ったそうです。
「タコの種類」
タコ類としては世界中で約250種類が知られており、日本近海では約60種類が確認されています。その中でも食用とされるのは5~10種類程で、日本ではマダコ、ミズダコ、イイダコがよく利用されます。
・マダコ
タコ類の中でも最も一般的で、本州以南の地方でタコといえばマダコをさすほどよく知られています。全長60cmの世界各地でみられる種で、日本では東北地方以南の沿岸地域で水揚げされます。中でも瀬戸内海の明石沖で獲れるものはアカシダコと呼ばれます。国内での漁獲量は以前に比べ格段に減っており、市場に出回っているものの多くは、アフリカ北西海岸などで獲れた外国産です。旬は夏です(東北地方では冬です)。
・ミズダコ
全長3m、体重20kgにも達する世界最大のタコで、水深200m以浅の砂礫底や岩礁域に生息してします。日本では東北地方北部から北海道、千島列島に、またアリューシャン列島を経て北アメリカの西海岸まで広く分布しています。身がやわらかく、水っぽいことからミズダコと名付けられました。味はマダコに比べると劣るため、多くは加工用として利用されます。旬は初夏です。
・イイダコ
全長20cm程度の小さなタコで、煮物などにして丸ごと食べられます。主な産地は日本周辺から朝鮮半島、東シナ海の浅海で、全身は小イボで被われています。卵は冬から早春に熟し、その米粒状の卵が体内に詰まっている様子から「飯蛸」と名付けられました。タコにしては珍しく旬は冬から春です。
2、タコの食史・栄養について
「日本人のタコ食史」
実はタコは日本では古くから食されており、弥生時代の遺跡からはタコ壺形の土器が出土しています。平安時代の「延喜式」にはタコの干物やイイダコの熟鮨(ナレズシ)の名があり、タコ料理についての記録が残されています。また江戸時代の料理書『料理物語』(1643年)には、桜煎(タコを石焼きにして干したもので削って食べる料理)、駿河煮(出し・たまりに酢を加えて、よく洗った蛸をまるごと、いぼが白くなるまでよく煮る。黒煮ともいう)、なます、かまぼこといったタコ料理が記載されており、江戸時代中期には一般的な武士の食事にもタコが出されていたといわれています。昨今でも加熱調理されることが通例で、多くの種は茹でると鮮紅色になります。たこ焼きやその原形とされる明石焼きの具材としても親しまれています。なお、下処理として表面のぬめりを取るために塩もみされることも多いです。
「タコの栄養」
●タコに含まれる成分と性質
タコは低カロリーで、栄養素が豊富です。ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンEなどのビタミン、更に鉄、亜鉛、などのミネラルに加えて、アミノ酸の一種のタウリンを豊富に含んでいます。タウリンは魚介類に多く含まれる成分で、動脈硬化予防や肝機能強化のほか、網膜細胞の機能を正常に保つ働きがあり、目の疲れにも効果を発揮します。更にタンパク質も多く含みます。夏場のものが特に美味とされます。関西地方には、半夏にタコを食べる習慣がありますが、これはタウリンを補給して夏バテを防ぐと言う由来からです。秋口にメスの体内にある卵は象牙色の袋に包まれており、タコの袋児(ふくろご)と呼ばれ、これは煮付けて食べます。また、産卵後の卵はその形状から海藤花(かいとうげ)と呼ばれ、塩漬けにします。なお、イカの吸盤が環状に並んだ微細で鋭利な歯を持つのに対してタコの吸盤にはそれが無く、大きく肉付きも良いため、それ自体の食感が喜ばれ美味です。この他、青森県の下北半島ではタコの内臓を茹でたものを「道具」の愛称で呼び、刺身や鍋の具などにして食べています。
●タコの産地
実は日本は世界でトップクラスのタコ消費国で水揚げされる約3分の2にあたる、年間約16万tのタコを消費しています。しかし日本での年間の漁獲量は約4万t程度のため、外国産のものが多く出回っており、中でもモーリタニア、モロッコなどのアフリカ北西部からの輸入が過半数を占めています。日本での水揚げ量は北海道が最も多く、次いで兵庫県、香川県となります。
●タコの選び方と保存法
生のタコは吸盤の吸いつきがよく、弾力のあるものを選びます。新鮮なものにはそばかすのような斑点があります。ゆでダコはきれいな小豆色で、弾力とつやのある皮がしっかりしたものを選びます。表面に粘りがあるものや、皮がはがれているものは避けましょう。
保存する際は塩でぬめりをとったあとに柔らかくなるまで茹で(醤油を少量入れると肌の赤さがより鮮やかになります)、冷ましてからラップなどに包んで冷蔵庫で保存します。
●タコを食べる際の注意点
タコは食べ過ぎるとかゆみが出ることがあるため、過敏体質の場合は注意が必要です。腐敗したものは腸炎ビブリオなどによる食中毒を引き起こすことがあるので、新鮮なうちに食べるようにします。
また、消化率は高いですが、消化に時間がかかるため、胃の弱い人や、胃の調子がよくないときは食べ過ぎに注意が必要です。
3、「タコ墨とイカ墨の違い」
上記に挙げてきた通り、タコは古くから日本人に愛されてきたよく食べる食材です。しかしなぜ「イカ墨」は料理としていくつもありますが、
「タコ墨」は食されないのでしょうか?理由として
①毒素が強い? 実は文字通りタコの墨だけならば無毒なのですが、タコは敵に襲撃を受けると、相手に存分に墨を吹きかけて文字通り「煙」に巻いてその間に逃げます。タコ墨が食べ物に使われない理由としては、天敵のウツボの臭覚を麻痺させ、カニの感覚も狂わせる特殊な成分があるため、毒素が強いのだと判断されてきた、というのが挙げられます。しかし少々誤解がありまして、この一連を細かく書きますと、タコが吐いた墨に混じった唾液にチロシンという毒素があり、これが墨に混じるというのが原因です。獲物を捕獲する時にもこのチロシンを使います。諸説や個人差がありますが、仮に人間が摂取すると命にまで影響はありませんが、嘔吐や発熱いわゆる食中毒になる可能性があるそうです。
②墨が残ってない タコは輸入されたものが多く、内臓はすでにほとんど除去されているということや、墨袋も小さくて水揚げのときにはほとんど墨が残っていない、ということも原因のようです。
③摂取しずらい タコの墨袋は、イカと比べて、奥まったところに位置しており捌くのに手間が掛かると言われています。
④量がイカに比べて少ない タコの墨の量は、イカと比べると量が少ないと言われています。
イカと比べると、手間も掛かる上に量も少ないため、お店としてもかなり扱いにくいというのも大きい原因です。逆にイカの場合は日本近海の多くの海で漁によって入手がしやすいということ、水揚げのときにも墨が残っていること、コウイカのように大きな墨袋を所有している種類もいること、などの理由から料理にも使いやすいです。仮にタコ墨料理というのを出すなら、いわゆる裏メニューにするか、かなり高額の料理にしなくてはならず、諸説ありますが料理屋でイカ墨料理があってもタコ墨料理が無いのはこれが一番大きいというのはよく言われます。
3、「タコ料理」
ご家庭でも出来るタコ料理を幾つかご紹介致します。
✩タコ飯
材料:米3合
タコ(一口大で。量はお好みで)
カツオダシ400cc
薄口しょうゆ20cc
酒20cc
塩・味の素を各ひとつまみ
ゴボウ約0.5本をささがきにする。
昆布(なくてもOK)5cmぐらい
作り方:
1、土鍋にご飯→ゴボウ→タコと敷く。
2、1に調味料とダシを入れて最初は弱中火で炊く。
3、鍋の蓋から煙が出てきたら火をやや弱めにする。
4、3の状態で煙からうっすらと焦げる香りがして来たら火を止める。
5、4を10分ほど蒸らす。
✩タコの揚げない唐揚げ
材料:タコ(茹でタコでも。量はお好みで)
調味料(薄口醤油、すりおろした生姜、味の素)
片栗粉
作り方:1、タコを一口大に切る。
2、調味料を合わしてタコを30分ほど漬ける。
3、2の水分をよく拭き片栗粉を塗してフライパンで片面ずつ焼く。
4、仕上げにバターを一掛け入れる。
※:普通に油で揚げても美味しい。
✩タコ丼
材料:タコ(量はお好みで)
アボガド(タコの量の3分の1程)
きざみ海苔・ごま
わさび醤油
作り方:1、タコとアボガドを一口大に切る。
2、丼にご飯をよそおい、海苔とゴマを敷く。
3、2の上に1を敷き、わさび醤油を掛ける。
✩タコサラダ
材料:タコ(量はお好みで)
野菜(レタス・ワカメ・玉ねぎ・トマト・ヤングコーン)
ドレッシング→調味料(グレープフルーツジュース・オリーブオイル
塩・味の素・ブラックペッパー)
作り方:1、タコは一口大に切る・
2、トマト・レタスを一口大に、ワカメはさっと湯がき一口大に切る。
3、ヤングコーンを軽く茹でて、玉ねぎはスライスして氷水にさらす。
4、ボールにグレープフルーツジュースを入れて調味料を振る。
5、器に1~3を入れて冷蔵庫で30分ほど冷やす
6、5に4をかける。
※:ポン酢やゴマタレも美味しい。
✩タコしゃぶ
材料:タコ(量はお好みで)
野菜(レタス・ほうれん草・ニンジン・ヤングコーン)
ラーメン玉
作り方:1、タコを冷凍しておく。
2、カツオダシをとる。
3、レタスは一口大に、ホウレンソウは軽く湯がいて一口大に切る
4、ニンジンは薄切り、ヤングコーンは軽く湯がく。
5、1をなるべく薄く切る。
6、ゴマタレやポン酢がおすすめ。
7、仕上げに残りのダシに塩・味の素・薄口醤油をいれる。
8、ラーメンを作る。
大まかではありますが、タコについて書かせて頂きました。
上記でも挙げましたがタコは実に栄養価が高く、カロリーの低い、
クセのないヘルシーな食材です。女性にもオススメですし、貧血や夏バテ防止にも効果は大きいです。気持ちが悪いとおっしゃられる方も多いですが、是非、お試しください。
<タココース 8,000円>
内容:付き出し・タコ刺身・タコの天ぷら・タコ鍋・タコシャブ・デザート
他の料理やコースと組み合わせも可能です。
店名:新明石
住所:〒542-0085
大阪市中央区心斎橋筋2-2-13
宝山心斎橋ビル1階
電話番号:(06)6211-2523
新明石URL: http://www.shinakashi.com/